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日記とか趣味とかサイトとかの話。
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「でさ、昨日のテレビでさ……」
 冬休みが終わって新学期早々の友達との会話。冬休みが終わって久しぶりに会うのに、昨日も学校に来てお喋りしてたみたいな普段と変わりない日常会話。冬休みに何かのイベントが有った訳でも無く、平々凡々な生活を送ってきた私にこの仕打ち。もっと何か刺激が欲しいよ。このままだと、新学期早々冬眠してしまいそう。
「ねえ、何かこう、いつもと違う話題は無いの。冬休みが終わって新学期が始まる初日だって言うのに、いつもと同じ様な話ってさあ……」
 私が話に水を差すと、さっちゃんが嫌そうな顔をした。そりゃあ、毎日メールのやり取りをしたり、冬休み中に何回か一緒に遊んでいれば、久々に会うなんていう実感は無いけどさ。
 でも、さっちゃんに嫌な思いをさせた事はちょっと後悔。
「あー、一つだけ有ったわ。このクラスに転校生が来るってさ。」
「それ本当。どこで聞いたの。」
 ぱっと私の胸が弾む。
 転校生が来るなんて、学校のイベントとしては突発的で、最も刺激的な出来事の一つじゃない。そういうのはもっと早く言うべきよね。
「皆噂してたし、先生達の雰囲気がいつもと違ったし、見慣れない車が学校の駐車場に有ったし。」
「それじゃあ間違いなさそうだね。」
「噂によるとね。男だってさ。」
「どんな感じかな。」
 期待が益々膨らむ。頭の中にはもう、三パターンくらいの想像が出来上がっちゃってる。
 別に女の子でも良いんだけどね。ほら、想像するにも多少の情報が有った方がやり易いじゃない。
 なんて、自分に言い訳してみる。
「んー、なんか期待してる所悪いけど、頭がおかしいらしいのよ。」
「えっ……おかしいって、どういう事。」
「脳の病気っていう噂だけど。」
 一瞬にして、期待が崩れた。それは想像以上に刺激的な事かもしれないけど、喜べる事じゃない。それに、他人事であろうと無かろうと、そんな事で喜べる程、私は酷い人間じゃない。
「でも……本当の所はどうなんだろうねえ。」
 何故か、さっちゃんが首をかしげる。
「どういう事。」
「普通学校に来るって事は、編入試験に受かったとか、単位を満たしてたって事じゃないの。良く分かんないけど、うちの高校には障害者を受け入れる様な特別な活動はしてないし。」
「あー、そう言えばそうだね。もしかしたら、馬鹿と天才は紙一重みたいな感じで、実は何か天才的な能力を持ってる、とかかな。」
「そうかもねえ。まあ、実際に会ってみないとそれは分からないわ。」
「そうだね。」
 実は凄いかもしれないって言っても、頭がおかしいって噂されるくらいなんだから、喜べないか。
「でもねえ、さっちゃん。イジメちゃ駄目だよ。」
「な、何よ突然。イジメないわよ。あんたねえ、私がそんな事すると思う。」
 さっちゃんが少し怒った。
「そりゃあ……」
 さっちゃんは小さい頃からの友達だから、考える事は大体分かる。さっちゃんの面倒臭がりな性格から考えて、無視しそうだから言っているんだけど。
「むしろ一切関わりたく無いわね。」
 やっぱり。無視も立派なイジメの一つなんだけどなあ。でも、ここで話をややこしくしても良くないから、冗談めいた感じにして誤魔化す。
「さっちゃんひどーい。」
「酷いってねえ……。」
「アハハ、冗談よ、冗談。」
 さっちゃんが呆れ顔になった。まあ、これでいいかな。
 転校生の話題が途切れて、何を話そうかと思った途端に先生が来た。皆が自分の席に戻る。
 先生が教室に入ると、学級委員がすぐに号令をかけて、皆が起立しようとした。だけど、先生はそれを手で静止して、皆を座らせた。先生のすぐ後ろには、転校生らしい男の子がついていた。一番後ろの席だから良く分からないけど、パッと見は普通な感じ。
「えー、今日は始業式がありますが、その前に転校生の紹介をします。」
 いつもより先生のテンションが低いのは、さっきのさっちゃんの話を聞く限りでは気のせいじゃないな。これから紹介する生徒がクラスに馴染めるとは思えないだろうしなあ。
「神月満(かみつき・みちる)君です。えー……皆、仲良くしましょう。」
 先生が紹介してる横で、神月君はマイペースに黒板に自分の名前を書いていた。
 ここまでは良かった。この程度だったら、多分、すんなりクラスに馴染めたと思う。でも、神月君はやっぱり問題児だった。
「へへへ……神月満です。よろしく。」
 大勢の前で緊張してあがってる、何の変哲も無い子とは違う。笑い方が、照れ隠しと明らかに違って、感情を制御出来ずに常に笑ってる、そんな感じ。多分、クラス全員が引いてる。先生は片手を額にあて溜息をついているし、前途多難ね、これは。
「神月君は一番後ろの席で良いんだっけ。」
「視力的には問題無いですよ、でも、出来れば一番前の席が良いなあ。」
 さっきの先生の言葉に、神月君を目の前にして授業するのが辛い、という意思が感じられるのが悲しい。って、あー、神月君が一番後ろの席に来るとなると私の後ろの席になるかもしれないのか。後ろであんな風にずっとにやにやされるのは、流石に気持ち悪いなあ。
 さっちゃんは三列目だから、六列目の私と違って、一番前の席になろうと一番後ろの席になろうと関係ない。だから、もう関係無い、って突っ伏してる。
「そ、そうか。それじゃあ、えっと、一番前の列の奴、誰か後ろに行っても良いって奴はいるか。」
 先生が明らかにうろたえてる。そんなに嫌なのか。それとも、最前列で授業を妨害する様な子なのか。
 最前列の六人の内、二人は視力の問題で前にいるから絶対に動かない。後は、残りの四人が空気を読むかどうか。
「あ、あの……」
 あー、気弱だけど優しい藤堂さんが譲ろうとしてる。彼女の事だから、誰かが席を譲って近くに座る事になるのを避けたんじゃなくて、神月君の望みを適えてあげようとしたんだろうけど……そこは空気読んだ方が良いな。
「な、なんだ、藤堂。」
 先生の顔が引きつってるし、語気も強い。横に立ってまっすぐこっちの方を見てる神月君は気付かないかもしれないけど、先生の顔が、今まで付き合ってきた九ヶ月で見た事の無い、こんな状況で無ければ思わず噴出してしまいそうな、面白くて怖い顔になってる。何人かは笑いを必死にこらえてる。
「あ、いえ……なんでも無いです……」
 さすが気弱な藤堂さん。先生の形相にたじろいで、席を譲るのをやめちゃった。結果オーライ。あれだけ先生が一番後ろの席にしたがってるんだから、何か重大な理由があるんでしょう。これで良いんだ、うん。
「そ、そうか。ならいい、ハハハハハ……」
 先生の顔が緩んだ。それは露骨過ぎじゃないかな。神月君は気付いてないみたいだけど、クラスの全員がそれを見てるんだから。教育者としてどうなの、その態度。率先してイジメなさいって言ってる様な物だよ。第一、神月君だって、もしかしたら気付いてるけど気付いてない振りをしてるとか……って、それはないか。
「誰もいないみたいだな……それじゃあ神月、悪いけど後ろの席な。」
「別に良いですよ、へへへ……」
 駄々をこねたりはしないんだ。今の所、にやにやしている以外に変な所が見当たらない。まあ、常ににやにやしてる時点で十分気持ち悪いけど。
「そ、そうかそうか、済まないな。」
「うん。」
 受け答えは、敬語を使えてないのに目をつぶれば、凄くしっかりしてる。凄く意外。
「机と椅子は廊下に一組用意してあるから、適当な所に運んで座ってくれ」
「はーい。」
 神月君はすぐに机と椅子を持って教室の後ろの扉から入ってきた。
 あー、緊張する。男子には悪いけど、男子の後ろを素直に選んでくれれば何の問題も無いのになあ。どんな理由があるにしろ、女の子の後ろでにやにやする男子はさすがに引くよねえ。
 どうか、男子の後ろの席を選びますように。
「じゃあ、僕はここで。へへへ……」

「それじゃあ、皆体育館に移動。」
「はーい。」
「光山、悪いけど神月の事よろしくな。」
「……はい……」
 悲しいかな、神月君が選んだのは私の後ろの席。
「へへへ……光山美月(こうやま・みつき)さん、よろしくね。」
「あ……よ、よろしくね、ハハハハハ……」
 私もつられて笑い返す。苦笑だけど。
 一番最初に名前を覚えられちゃったよ……椅子の背もたれの後ろに貼ってあるネームシールのせいか。
 病気だか何だか知らないし、そんな事で差別しちゃいけないと頭では分かってるけど、真後ろでニタニタされるのは気味悪がっても別に罰は当たらないよね……
 さっちゃんを見ると、励ましてくれてるのか、自分に災難が降りかからなくて嬉しかったのか、私に向かってガッツポーズを返して、そのまま私を置いて体育館に向かって行っちゃった。教室には、未だその笑顔と言うのも嫌な笑みを崩さない神月君と、私の二人だけ。皆はもう、足早に教室を出てった。あーもう、新学期早々憂鬱。

 悪い意味で、刺激的な日々が続きそうです。



・軽い後書き
光山美月(こうやま・みつき)に反応した貴方、おめでとう、病気でs(ry
Lunaticに反応した貴方、おめでとう、御想像した物が元ネタです
きっと二話であの言葉が出て来まs(ry

※一部、不適切な表現、至らない表現が有ったので修正しました

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